「生命を脅かす重病を患っている当人とその家族」が対象である緩和ケア。
一般病棟とは違う、看護師の役割があります。
緩和ケアに「一度関わってみたいけど、こんな私じゃ、、、」と考えている方も多いと思います。
私がそうだったので。
私はまだまだ新人なのに、希望していないにも関わらず緩和ケア病棟へ配属されました。
そんな私だから言える、「緩和ケア看護師に向いている人」についてまとめていきます。
経験が浅くても緩和ケア看護師として関わっていくことができることを知っていただくことで、「挑戦してみたい!」って気持ちに更になってもらえたら嬉しいです。
緩和ケアに求められる3つの性格
- 協調性がある
- 穏やかな心を持ち、人に寄り添える
- 仕事とプライベートを分けることができる
医師も看護師も人です。一人でやっていたら直ぐに限界が来ます。チームとして対応することで、抜けや偏りがなくなり、結果として質の高いケアが提供できます。
「経験が浅くても緩和ケア看護師として関わっていくことができる」と胸を張った風に述べましたが、もちろんまだ一人前ではないです。
同じ職場で働く同僚の協力があってこそ、こんな私でも緩和ケアで働くことができています。
分からないことを分からないと言える、相談できる、大変そうにしていたら声をかけるなど、チームとして働いていることを意識してお互い助け合っていくことが大切です。
まあこれは、どこの職場でも一緒ですね!看護師じゃなくても!
でも、急性期病棟では「誰とも協力せず、一人で黙々と仕事をこなす人」もいると思います。
そんな看護師がダメというわけではないですが、緩和ケアではより協調性が必要だと感じます。
協調性が大切な理由1:カンファレンスが多い
その理由の一つが一般病棟よりもカンファレンスが多いことです。
一般病棟では看護師だけで済ませるカンファレンスが多かったですが、緩和ケア病棟では医師、看護師、薬剤師、栄養師を含めたカンファレンスが毎日行われます(病院によります)。
そこで他職種の意見を聞いたり患者さんが必要としていることを何とか実行できるように協力を得たり、情報共有を行います。
お互いに協調性を持ち、相談しやすい関係性を築いていくことで患者さんにとってより良い医療の提供ができます。
協調性が大切な理由2:家族ケアが難しい
もう一つの理由は、家族ケアが難しい、ということです。
カンファレンスで情報を共有し、チームとして困難に立ち向かう体制がとても重要です。
「一人ひとりの患者さんに合った個別の看護を」ということを看護学生のころから耳にタコができるくらい言われます。
その家族も看護の対象であることも言われたと思います。
緩和ケア病棟にきてすぐに「こんなの自分できない!」と思ったのが家族ケアです。
大切な人、親族が重病を患っているその状況を受け止めている家族、受け止めきれていない家族、看護師に迷惑かけまいと冷静を装う家族、様々な家族がいます。
そんな状況だからこそ、看護師からの一つ一つの言葉選びがとても大切であり、不安を煽ったり、安心してもらおうと必要以上に患者さんの身体症状を良く伝えたりしてしまうと、患者さん家族との大切な時間を確保できなくなってしまいます。
先輩に家族ケアについて相談すると、どの先輩にも「私にも難しい。だからカンファレンスしてみんなで相談する」と言われました。
家族の気持ちを知らなきゃ、家族ケアをしなきゃと先走り、看護師だからといって初めて家族にお会いした最初の一言で「患者さんがこういう状態ですがどうお考えですか」なんて聞きづらいです。
面会に来る家族を労い、体調を伺い、信頼関係を築いてから家族ケアしていくことが理想だと思います。
様々な家族に合った個々の看護を提供するためのカンファレンス、相談、家族との信頼関係を築くためにも協調性が必要だと私は考えます。
穏やかな心を持ち、人に寄り添える
次に緩和ケアに求められる性格の二つ目、「穏やかな心を持ち、人に寄り添える」です。
直ちに適切な助言をするというよりは、先ずは患者さんや家族の思いを聞いてあげることが大切だと思います。
緩和ケアでは患者さんが自分の症状を受け止めきれず、涙を流しながら看護師にそのことを吐露することがあります。
そんな場面で「大丈夫大丈夫!何とかなるから!私たちもついていますし!」なんて無神経に言い放つ看護師はいません。
「そう思われていたのですね」「――ということですね」などと共感・相槌をし、傾聴しながら患者さんの気持ちをもっと探っていきます。
その不安にはどんな問題が原因になっているのかを知り、そこに対応していくことが必要です。
でも最初からそんな看護師の思考をしながら対応できないし、私なんて患者さんの背中をさすりながらお話を聞いて一緒に泣いていました事があります。
「寄り添う」形も沢山あります。「穏やかな心を持ち、患者さんに寄り添えた」からこそ、その寄り添い方が間違いだったとは思っていないです。
仕事とプライベートの区別が大切
プライベートが充実していないと、いい仕事ができません。もちろん「寄り添うこと」は大切ですが、それを「引きずらないこと」も同じくらい大切だと考えています。
最後に大切なのが「仕事とプライベートの区別」です。
これも前述の「患者さんのお話を聞いて一緒に泣いていた」経験を元に話します。
私はそもそも仕事とプライベートを分けて生活できている方ではあると思うのですが、無意識のうちに仕事のことを持ち帰ってしまうこともあると感じました。
ある時に患者さんの話を聞いて一緒に泣いていたことを緩和医師に伝えたのですが、
「泣いちゃうよね。ああいう話を聞くと本当に患者さんつらいんだなって感じるよね。でも当の本人ではないから、全部を受け止めなくても、受け止めようとしなくても良いと思いますよ」
と言われました。
看護師だから「寄り添わなきゃ」という気持ちになって、確かにその患者さんの全部をわかろうとしていた自分の気持ちに気づきました。
まとめ
一般病棟より看護師の心身に対して重い経験がたくさんあるなと感じます。
患者さんと泣くのもよし、全部受け止めようとするのもよし、落ち込むのもよしです。
患者さんに一生懸命向き合っている証拠です。
でも、プライベートまで持ち込まず、切り替えをして過ごすことが、緩和ケア看護師として長く働くことが出来るのだなと日々感じています。